お茶の旅・京都編〜日本の緑茶が生まれた町でお茶三昧〜
おはよう、世の中!
宇治茶ムリエの長砂です。
※宇治茶ムリエ認定講座を受講した記事はこちら。
この夏はすっかり緑茶の水出しの虜になっています。
水出しにするとお茶の渋みも少なくなるので、たくさんの量を飲めるんですよね。
おいしい水出し緑茶を求めて、宇治茶の産地のひとつ、宇治田原町にやってきました。
実はここ宇治田原町は、私たちがよく知っている急須で淹れるお茶「緑茶(煎茶)」の発祥地なんだそう。
今回は、煎茶を生み出した永谷宗円(ながたにそうえん)さんの生家がある湯屋谷(ゆやだに)地域でお茶をたっぷりと堪能しようと思います。
宗円交遊庵「やんたん」で石臼で挽く抹茶体験
まずやってきたのがこちら「宗円交遊庵やんたん」
「やんたん」という名前は湯屋谷(ゆやだに)の地元での呼び方。
山深いこの地域では、谷ごとに集落の名前があり、「谷」を「たん」と呼ぶそうです。
湯屋谷→やんたん
西谷→にしたん
中谷→なかんたん
「塩谷」というエリアは「しおたん」と呼ぶかと思いきや、「しょんたん」と言います。
「やんたん」はもともと茶工場で、町がリノベーションをして地域の方々で運営しています。
今日は、やんたんで広報をされている内藤さんの案内のもと、石川県加賀市で茶図(ちゃず)というお茶ブランドを手がけている直地さんと一緒に湯屋谷地域を巡ります。
「やんたん」では、煎茶、玉露を、地元のお母さんたちの手作りスイーツと一緒にいただくことができたり
お茶のおいしい淹れ方を教わったり、石臼でてん茶を挽いて抹茶をつくる体験ができます。
石臼で抹茶づくりに体験
今日は、人生初めての石臼体験に挑戦!
講師は浅田豊士さん。湯屋谷でお茶の生産から販売までを手がけています。
・浅田園本店
https://asadaen.com/
抹茶にするために育てて加工した茶葉を「てん茶」と言います。
石臼の中心にてん茶をいれ、反時計回りにぐるぐると回す。
回すのも大変ですが、石臼を抑えているのも大変なので、4人で交代しながら、ぐるぐる。
ぐるぐる。
(およそ1時間)
抹茶ができました!!
1時間ほどまわして、およそ薄茶3杯分。
めっちゃ大変だ!!
でも、ぐるぐるの中心を見てると、ドラム式洗濯機を見てるのと同じぐらい無心になれるので、邪念を払いたい人にとてもオススメです。
さっそく、やんたんの中にある畳の間で、挽きたての抹茶を使って薄茶をいただきます。
実は私、高校時代は茶道部のエースをはっていたので、お茶を点てるのはちょっと自信があります。
茶さじ3杯分の抹茶を茶碗にいれ、お湯を入れようと思ったその時・・・
浅田さん「まずは水をちょっと入れて、ねってください」
長砂「・・・!? ねるとは?」
浅田さん「お湯を入れる前に、少量の水で抹茶を練ることで、点てたときの泡立ちが細かくなります」
長砂「知らなかった・・・なんちゃって茶道部が赤裸々に(恥)」
抹茶を練るときは平仮名の「いいこ」を書くように茶筅(ちゃせん)を動かします。
おおよそ1分練ったら、お湯を入れ、茶筅を縦に動かして泡立てる。
これで完成。
自分たちで挽いた抹茶は控えめに言っても最高です。
宇治田原のお茶の歴史
抹茶をいただきながら、緑茶(煎茶)発祥の地と言われる宇治田原町のことを教えていただきました。
簡単にで恐縮ですが、まとめるとこうです。
お茶が初めて中国から伝えられたのは8世紀ごろだが、当時はあまり大きなブームにはならなかったそう。
鎌倉時代になって栄西(えいさい)が当時の中国で流行っていたお茶文化「抹茶」を持ち帰り、宇治田原でもこの時代からお茶の栽培が始まった。
抹茶は公家、武士、僧侶の間で飲まれるように。
戦国時代を茶の湯の切り口で描いた漫画「へうげもの」では、茶道、茶の湯は、戦国武将のステイタス、格式高いものになっている。江戸時代になっても庶民には粗悪なお茶しか出回らなかった。江戸時代中期に、宇治田原町湯屋谷の永谷宗円が、蒸した茶葉を揉みながら乾燥させることにより、 湯を注ぐだけで美しい緑色の美味しいお茶が出ることを発見し、 宇治製法(青製煎茶製法)を確立。
江戸に持って行ったらとても評判が良く、宗円さんはその作り方をおしみなくいろんな人に伝え、煎茶が全国に広まる。
煎茶大流行の一方、てん茶(抹茶)をつくっていた人たちは「これはまずい!」となり、てん茶の育て方と、煎茶の技法を組み合わせました。そうして生まれたのが高級茶・玉露。
今では宇治田原町は、京都府内で最も玉露を生産している地域になりました。(※平成26年度京都府茶業統計による)
かなり大雑把にまとめましたが、これが宇治田原町が緑茶(煎茶)発祥の地と言われる所以。
やんたんでは、他にもこの緑茶発祥地域の生産者さんのお茶も販売しています。
それぞれのお茶の違いについては、どんどんスタッフに聞いてみてくださいね。丁寧に教えてもらえます。
お昼。うどんと、新たなお茶の出会い
やんたんを後にして向かったのは・・・うどん屋さん。
時刻はすでに15時前。お腹がぺこぺこすぎたのと、閉店直前だったこともあり、ものすごい早さで食べたので写真はありません。
お茶の話でもないので載せなくてもいいのかもしれない。
ただ、うどんも親子丼もすごく美味しかったのでお店情報だけでもお伝えさせてください。
●京のおうどんやさん たなか屋 宇治田原店
http://www.pref.kyoto.jp/yamashiro/no-kikaku/yamashiroplatform/048.html
うどんの後は、すぐ隣にある木谷製茶場が運営する喫茶「お茶の郷 木谷山」さんに。
やんたんに向かうときに、木谷山さんの前を通っていて、気になって仕方なかったこちらの看板。
いらっ茶〜い! と誘われるがまま店内に。
木谷山さんでは、たくさんの種類のお茶が購入できるだけでなく、宇治茶を使ったツイーツもいただくことができます。
一番気になったのが「はねだし茶」
高級煎茶をつくる工程で、はね出された茎の美味しいところを集めたお茶。
試飲させていただきました。
水出しのはねだし茶。見た目は濃厚だけど、くどくないさっぱり感。即購入。
ちなみに、お店の名前に「谷」が入っていますが、「木谷」は「きたん」とは読まずに「きたに」とそのまま素直に読むそうです。
●お茶の郷 木谷山
https://www.kitani-s.com/cafe/
さらにディープなお茶の世界へ
ふたたび、やんたんに戻って、石臼体験を教えていただいた浅田さんと合流し、浅田さんの茶畑にご案内いただきました。
ご自宅の裏手にある、なかなかの急斜面を登ること5分。
足首ってこんなに曲がるんだと、日頃の運動不足を反省していると、目の前にドーンと茶畑が!
茶畑の周りを歩きながら、茶樹のあんなことやこんなことまで教えていただきましたが、ちょっとぼくのお茶レベルではきちんと説明できないので、割愛させていただきます。精進します。
浅田さんのご自宅にお邪魔し、浅田さんがつくった玉露を2種類いただきながら、さらにお茶のあれこれをご教授いただきました。
浅田さんの奥様からおにぎりや黒にんにくまでいただいて、ぼくの頭とお腹はお茶でいっぱいに。
お土産にと、ちゃっかり浅田さんの玉露を手に入れました。
高級茶の玉露はなかなか買えないからね。ふふふ。
浅田さんのお話の中で特に印象的だったのは、茶の樹の「年齢」について言及することが多かったことです。
このお茶のWebメディアに関わるようになってから、茶樹の品種、お茶の育て方、摘むタイミング、茶葉の加工の方法の違いなど、新しい発見はたくさんありましたが、茶樹の年齢によるお茶の味の違いを聞くことはありませんでした。
いただいた玉露も、「まだ幼稚園だから一級品になるにはあと数年かかる」とおっしゃっていました。
植えた樹がその土地に馴染むようになるには、長い時間がかかるそうです。
初めてづくし、お茶づくしだった宇治田原町湯屋谷の旅。
正直、勉強不足と情報量が多すぎて頭はパンパンですが、お茶の生産者さんから直接教えていただける機会はとても貴重で、とても楽しかったです。
やんたんでは、生産者さんと直接お話できるチャンスがあるので、ぼくのようにお茶にハマり始めた人にはぴったりの場所。
また、湯屋谷や宇治田原のパンフレットや情報もたくさん設置しています。
今回は、残念ながら湯屋谷地域の魅力のうち、1割ぐらいしか紹介できていません。
9月以降もどんどんイベントが増えるそうなので、ぜひ遊びに行ってみてください^^/
●宗円交遊庵やんたん
営業時間: 10:00〜17:00
定休日:水曜、木曜
住所:京都府綴喜郡宇治田原町湯屋谷尾華21番地
Facebookページ
https://www.facebook.com/SoenKoyuanYantan/
◯9月のイベント
9月8日(土)、9日(日)・・・抹茶の石臼挽き体験
9月22日(土)・・・夏番茶作り体験
※詳しくはFacebookページをチェック
やんたん訪問記念にと、やんたんにて浅田さんが育てた茶の樹を記念に購入したところ・・・
苗木の保証書が付いてきました。
育てて枯れたらこっちの責任だと思うけど・・・。来年の春までに生きのびれなかったら交換してくれるそうです。
なんと男前なんだ、浅田さん!