《後編》「日本緑茶発祥の地」宇治田原町の老舗茶舗でいただく自然の香味豊かな”玉露”

お茶のまちを訪ねる

さて今回も、前回の記事に引き続き、宇治田原町の「大正園茶舗」にて玉露をいただきます。

しっかり沸騰させたお湯を、じっくり冷まして淹れる基本的な方法でいただいた前回の「玉露」…。
舌の上でコロコロ転がしながら味わう茶葉の旨味を愉しみました。

対して今回は、同じ「玉露」の茶葉を使いながらも、前回とは異なる、とても変わった飲み方をご紹介します!

この写真をご覧ください。

さっそく違和感いっぱいですよね……。
そうです。湯のみに茶葉が直接入れられています。

茶葉の量は約3グラムずつ。
お湯を入れずにそのままお茶碗に入れると、結構多く見えますね。

今回使われる茶葉は「大正園茶舗」の『翠露』。
もちろんこれも「玉露」です。

そしてこの通り、急須を使わずに茶葉が入った器に直接お湯を淹れます。

しばらくすると、細かい針のようになっていた茶葉が開いていくのがわかります。
写真では少しわかりにくいですが、お湯が次第にきれいな深い緑色のお茶になっていきます。

そして、器に蓋をしてしばらく蒸します。
さて、ここからどのように飲むと思いますか?

ちなみにこの珍しいお茶のお作法は「茶閉式」(ちゃっぺいしき)と呼ばれるのですが、別名「すすり茶」とも呼ばれます。
これ、ヒントですね。

さて、お湯を注いでから1分ほどでしょうか。「そろそろ、いい頃かな」と声がかかります。
そこでお茶碗を持ちあげ、蓋を少しずらして、蓋と碗の間から茶葉が飛び出さないようにお茶碗をゆっくりと傾けて飲んでみると……

茶碗の中で茶葉から直接、旨味がドリップされているお茶が、少しずつ口の中に入っていきます。
お茶の量が減ってきたら、蕎麦を食べるときのように、音を鳴らしながらすすって、最後までしっかり味わいます。
ちょっと行儀が悪いようですが、少しずつ、すすりながら飲むのが正解なのです!

これが「すすり茶」とも呼ばれる所以ですね。

この飲み方だと、茶葉の風味やお茶の旨味がしっかり濃く味わえます。
そして意外にも苦味は少なく、スッキリとした味わい。
これほどダイレクトな味が楽しめる飲み方だと、茶葉によって全然違う味わいになりそうです。

さて、しっかりすすった後のお茶碗の中を見てみると、けっこう水分が残っていました。
もっと強くすすってもいいようです。

この「すすり茶」は、入れるお湯の量も少なく、茶葉がほとんどの水分を吸い上げるので、飲めるお茶の量はごくわずか。
でもその分、旨みや甘みがギュッと詰まった「玉露」を味わうことができます。

ここでも2煎目を淹れます。
もちろんその際も、直接お茶碗にお湯を注ぎます。

茶葉の品質や淹れ方によっては3煎目まで楽しめるとのことでした。

2煎目をいただいた後の茶葉はこんな感じ。
お湯を含んで葉っぱが開いているので、お茶碗の半分くらいまでいっぱいになってます。

少し自分で調べてみましたが、この茶殻にお醤油などを少し垂らしておしたしのようにして食べることもあるようです。
食物繊維などのお茶の栄養を全部摂り入れられるようなので、家で今度試してみたいですね!

店頭で、お湯を注ぐ前の状態の茶葉をひとつまみ口の中に入れて食べてみたところ、パリパリとした茶葉の香ばしい風味が楽しめました。

以前、大女優で歌手としても有名な李香蘭さんは、巡業の旅中で簡単に栄養を摂るために茶葉を持ち歩いたそうです。
ちょうど今でいう、栄養補助食品とかサプリメントといった使い方もされていたのかもしれません。

最後にお茶菓子をいただきました!
そして当然のように、ここでもしっかりお茶をいただいたのでした。

このときも「玉露」茶葉ですが、淹れ方は、水出しで。
和三盆の優しい甘みの本わらび餅とも、とてもマッチしていました!

最後に…ここまで「玉露」のことを詳しく教えてくれた「大正園茶舗」の奥村由紀子さん(右)と奥村郁子さん(左)です。
それぞれ異なる煎茶道を学ばれているので、茶葉の楽しみ方も幅広くご提案いただけるのが「大正園茶舗」さんの特徴かもしれません。

また近いうちに、宇治田原町からお二人が発信される、京都の茶葉にこだわった「玉露」をはじめとするお茶を楽しみにきたいと思います。
そして皆さんもぜひ、お家にあるちょっといい茶葉を使って、「茶閉式」でお茶を淹れて、思いっきりすすってみてください!

店舗情報

店名:大正園茶舗
住所:〒610-0231 京都府宇治田原町 大字立川小字西垣内7−2
電話:0120-882-012
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日曜日
ホームページ:http://taisyouen.com/

稲葉 洋平

TPM.ディレクター。小さい頃から母の出身地である静岡から定期的に送られてくる緑茶が主な飲み物。そのおかげで肌年齢には自信あり。最近は自分でドリップして飲む...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧