知ると日本茶が10倍楽しめる!専門店でよく聞かれる「日本茶についての7つの疑問」に答えてもらいました!(後編)

日本茶の専門店「一保堂茶舗」の広報・川越さんに、日本茶についての疑問に答えてもらう今回の特集。いよいよこの記事でラストとなりました!
前編・中編では、すでに以下の疑問についてお答えいただいています。
(1)お茶の保存方法
(2)抹茶は自分でも(茶道をしていなくても)点てられるの?
(3)水出しのお茶はどれ?
(4)新茶っていつ飲んだらいいの?(お茶の鮮度はいつまで?)
さて、今回の疑問はこちらから。
(5)おいしく淹れられる急須ってどんな急須?
─ 茶葉からお茶を淹れるときに不可欠な急須。形も大きさもいろいろありますが、その中でもおいしく淹れられる急須ってあるんでしょうか。
川越:そうですね……茶葉の特徴もいろいろあるので一概には言えないのかもしれませんが、しっかりと茶葉の味が出やすい急須はあります。
茶葉は、お湯を注いで葉が開くときに味が出ます。
よく急須の口に小さなザルといいますか、カゴ網がセットになった急須がありますよね。あれは、茶葉にとっては、ちょっと窮屈。茶葉が開いていくのに十分なスペースがないと、茶葉本来の味も出ないので、たくさん茶葉を入れた割りに味が薄い……ということも。
ただ、急須を使った後は、カゴ網を外して洗えるので、このタイプの急須は使い勝手がいいんですよね。
─ 確かに、カゴ網を使った方が、急須を洗うのも断然ラクチンです!
川越:ええ(笑)ただ、粉茶や深蒸し茶など細かい茶葉にはいいんですが、一保堂のような針状の茶葉の味をしっかり引き出したいなら、カゴ網を使うよりも、急須の内側、注ぎ口のところに茶こしが付いているタイプの急須の方が適しているのかなと思います。さらにいうと、縦に長いものより横に広がっている方が、茶葉の繊細な味わいを引き出してくれるんです。
川越:急須の形だけではなく、大きさによっても味は変わってきます。小さな急須で淹れた方が、繊細な味わいが楽しめますし、大きいと大味になります。片手で持てるくらいの小ぶりな急須と、土瓶サイズで淹れた場合とでは、また味が違うんですよ。250ccまでの急須なら、味のコントロールがしやすいのかなと思いますね。
またフタの小さな見た目の可愛らしい急須もよくありますが、頻繁に使うことを考えたら、フタは大きい方がいいですよ〜。洗うときにも、茶葉を淹れるときにも、何かと扱いが楽なので、これから購入を検討するという方がいらしたら、急須のフタは大きめのものをオススメします!
あ、あと茶こしは、穴がいっぱい開いていてドーム型になっている、出べそ型がオススメです。
─ 出べそ型…そんな呼び名があるんですね〜。あと、フタの大きな急須も確かにそう!急須の奥にはりついた茶葉を洗いたいとき、フタが小さいと手も入れにくい…。
(5)おいしく淹れられる急須ってどんな急須? 答え
茶葉がたっぷり広がるような急須だと、茶葉の味がしっかり出る。横に広がっている平たい形、フタの大きなものがオススメ!
─ 茶器類は、一保堂茶舗さんで開発したオリジナル商品もあります 公式サイトから購入もできるので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
http://shop.ippodo-tea.co.jp/kyoto/shop/goods/utensils.html
─ 続いては、急須の質問と似ていますが、こちら。
(6)湯飲みによって、お茶の味は変わる?
川越:これは…厳密にいうと、味そのものは変わらないと思うのですが、飲んだときの感じ方は全然違ってきます!
川越:右の筒型は、ほうじ茶や玄米茶、番茶などを飲むときによく使われる湯飲みです。これは量が入りますし、陶器の厚みもあるので、熱々のお茶をたくさん飲むのに適しています。
一方、左の薄手で口が広い方は、煎茶を飲むときによく使われる湯飲みです。口が広いので、飲んだときに、お茶が口の中に広がるようにして飲むことができます。
このようにいろんな茶器がありますが、口に当たる部分が薄い方が、より繊細に味を感じられるのではないでしょうか。

一保堂茶舗のオリジナル「木村硝子店製グラス」
ガラスの容器でもこちらのグラスは、チューリップのように口がすぼんでいます。
そしてこちらのグラスは、口が広がっていますよね。この2つのお茶を飲み比べてみてください。中に入っているお茶は同じですが、飲んでみると、感じ方が全く違うことが分かっていただけると思います。
─ はい。では、いただきます!

飲みくらべると、あまりの風味の違いに、目を見開く!!
─ ん? んんんん!!!! ぜんっぜん、ちがう〜!!
そうですよね(笑)チューリップ型の方は、スッと一気に入っていくような印象があると思います。また、口が広い方は、口の中にお茶の味わいがじんわり広がっていく感じがしませんか。
─ そうですね。まずお茶が口の中に入ってくるスピードが全然違います。それで、味の印象も全く変わってきますね。
川越:香りについては、いかがですか?
─ 香りの立ち方も違いますね。先がすぼまっている方が、より豊かに香りを感じられるような気がします! 日本茶もグラスの違いで、こんなにも感じ方が変わるなんて…知らなかった。なんだか、ワインのようですね。た、楽しい!!
川越:楽しんでいただけたようで良かったです(笑)
でも、このお茶にはこの湯飲みが…とあれこれ言い始めると、日本茶って難しい…面倒くさい…と、なりかねないので、家にあるマグカップで日本茶を飲んでいただいても、全然問題ありません。難しく考えずに、まずは気軽に楽しんでもらえることが一番です!
(6)湯飲みによって、お茶の味は変わる? 答え
味自体は変わらないけれど、飲んだときの感じ方は全然変わってくる!
─ いよいよ最後の質問です! 結局、最後に行き着くのは、この疑問なのかもしれません。
(7)結局、何を飲んだらいいのか分からない
─ 日本茶がたくさんあることを知ると、今度は、いったい何を飲んだらいいのか分からないという疑問が湧いてきます。お店でもそういった質問が多いのではないでしょうか?
川越:はい、そうですね。こうした質問をいただいた場合は、その方のお好みに合った日本茶を提案すべく、逆にこちらからいろいろな質問をさせていただくんです。例えば、どんなときに飲みたいのか。朝起きたときに飲みたいのか、それとも食後に飲みたいのか、飲むタイミングやそのときの気分でも、飲みたいものって違ってきますよね。
後は、さっぱりした飲み口が好きなのか、まったりしている方がいいのか、香りはどんなものがお好みなのか、いろいろ伺ってから、その方に合いそうなお茶を提案しています。
─ そんなに細かく聞かれるんですね。う〜ん、では、わたくし江角の場合のオススメを教えていただけますか? たとえば私が朝、仕事を始める前に飲むなら。
川越:仕事前ですね。熱いお茶と冷たいのではどちらがいいですか?
─ 猫舌なので、冷たいものがいいです!
川越:では、飲み口はさっぱりしたものか、トロンとしたものではどちらがいいでしょうか?
─ さっぱりしたものがいいです。
川越:それなら、「くき煎茶」がいいかもしれません。茎ばかりを集めた煎茶で、独特の香りがあります。香りには好みがあるので、店頭では茶葉の香りを試していただけるようにしています。
─ 茎だけの煎茶なんてあるんですね。
川越:茎ならではの、コクのある甘みと爽やかな香りが特徴なので、「さぁ、仕事を始めよう!」というときに飲んでいただくと、仕事モードに気分を切り替えていただけるのではないでしょうか。
─ なるほど! ありがとうございます。せっかくなので、他のライターからも質問いいですか? 稲葉さん、こんなときにオススメの日本茶を教えて欲しい!って、ありますか?
稲葉:朝、起きたときにのどを潤してくれる日本茶が知りたいです。
川越:朝ですね。起きてすぐに飲むお茶ならコクがあるものより、さっぱりしたものがいいかもしれませんね。
稲葉:量もたくさん飲みたいです。
川越:なるほど。すぐに飲みたいでしょうし、時間をかけずに飲めるもの。う〜ん……それなら、2つオススメしたいものがあります。1つは、しっかりした香りで目を覚ますという意味で、ほうじ茶を熱々で淹れて、氷を入れて冷やして飲む。もう一つは、香ばしい玄米茶の水出しもいいですよ〜。
─ 味だけではなくて、どんな気分のときに飲みたいか、またどんな風に飲みたいかで、提案するお茶もいろいろ変わってくるんですね〜。
川越:そうなんです。だから、詳しいことはお店に来て相談していただくのが一番の近道かもしれません。よく「日本茶について知らないから、お店に行きにくい」という方もいらっしゃるんですが、日本茶を知らない人こそ、お店に来ていただきたいなと思っています。
(7)結局、何を飲んだらいいのか分からない 答え
どんな気分のときに飲みたいのか、どんな風に飲みたいかで、いろいろな日本茶を楽しんでもらいたい。
専門店で相談すると、いろいろ教えてもらえる!
─ 以上、3回に分けて、日本茶に関する素朴な疑問にお答えいただきました。川越さんありがとうございます! なんだか、だいぶ日本茶通になってきた気がします(笑)
さて、私にとって今回の取材での一番の収穫は、抹茶へのハードルがかなり下がったこと(前編)。
お作法はいったん置いておいて、飲み物として抹茶を楽しんでみては?というお話を伺って、取材後、ずっと棚の奥に眠っていた頂き物の抹茶を初めて飲んでみました。
茶筌でお抹茶を点てるわけでもなく、前編で川越さんに教えてもらったように、ボトルに粉と水、氷を入れて、シャカシャカ振って、抹茶ミルクにして楽しんでいます! 今まで、お店でしか飲めないと思っていた抹茶ミルクが、こんなに手軽に家で楽しめるなんて!と、新たな日本茶の楽しみを手に入れました。
皆さまも、今回の記事で日本茶に関するいろいろな疑問が解決した、でしょうか?
インタビューを通して思ったのが、「日本茶って、もっと自分スタイルで自由に楽しんでもいいんだ!」ということ。日本茶を難しく捉えずに、記事を参考にどうぞ自分なりの楽しみ方を見つけてくださいね〜!!!
店舗情報
住所:〒604-0915 京都市中京区寺町通二条上ル
電話:075-211-3421
営業時間:午前9時から午後6時
定休日:休まず営業(正月を除く)
アクセス:京都市営地下鉄東西線「京都市役所前」駅より 徒歩約5分
H.P:http://www.ippodo-tea.co.jp/
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