お茶にもシングルオリジン⁉︎ 京都・太秦にある「茶菓 えん寿」の香りと旨味にこだわる日本茶と水無月
”キネマストリート”大映通り商店街の、日本茶と和菓子が味わえるカフェ
京都・太秦にある「大映通り商店街」。”キネマストリート”の名でも親しまれている商店街で、大映映画撮影所とともに発展しました。
古くからのお店もあり、地域の憩いの場として愛されています。また、東映太秦映画村や広隆寺など観光スポットが近いので、観光客の往来もある場所です。
この商店街で2017年にオープンした「茶菓 えん寿」は、日本茶と和菓子が味わえるカフェ。
「茶」と「菓子」で色々な方との
「えん(縁)」に恵まれ、広がっていく(「寿」)
というところから命名いたしました。
えん寿のホームページには、店名の由来がこのように書かれています。日本茶と和菓子というと、奥が深かったり、ちょっとハードルが高いと思う方も多いのではないでしょうか? でも「日本茶も、街かどのカフェのようにもっと気軽に楽しんでほしい」という願いをこめて「えん寿」にしたそうです。
カウンターとテーブル席からなる店内は、白を基調としたすっきりなデザイン。爽やかな壁紙に木製テーブルがアクセントになっていて、ほっとくつろげる空間になっています。コーヒーが出てきても違和感のない、カフェのような雰囲気ですよね。
喫「茶」店なのになぜお茶が飲めない?疑問から単身京都へ
こちらは、えん寿店主の泉さん。老舗の和菓子店「老松」で18年修業を積んだあと、40歳でえん寿をオープンしました。
北海道札幌出身で、もともとは地元で板前修業をしていたそうです。
その修行中に「喫茶店」に疑問を抱きます。喫茶店は「喫茶」(茶を喫する)場所なのに、扱う飲み物はほぼ「コーヒー」で、何で「お茶」じゃないの?
その疑問を追求するべくお茶の勉強がしたい!となったとのこと。お茶といえば和菓子がつきもの、和菓子といえば京都、という図式で単身京都へやってきたという、ユニークな経歴。
一念発起で京都へ来たものの、身寄りがまったくない状態。とにかく和菓子店に就職をしようと、求人がないか一軒一軒あたっていったそうです。そんな中、老松への就職が決まり、業務を通し和菓子を中心に勉強がはじまりました。
老松ではお菓子作りばかりを行う、職人のようなポストの人が多いそうです。ですが泉さんは催事で販売をするなど、お菓子作り以外の業務もたくさんこなしたのだとか。いろんなことが多方面から学べてよかった、その経験が今に活きているともいいます。
約50種のお茶とお手製和菓子が楽しめます
お店で用意されている日本茶の種類は、何と約50種も!! 京都なので宇治茶メインかと思いきやそうではなく、各産地のものが用意されています。
そしてそのほとんどが、泉さん自ら産地や農家を訪ね歩き選んだもの。香りと旨みに優れた茶葉を中心に、自分の舌で確かめ間違いないものを、そして生産者の顔が見えるものを選びたかったのだとか。通常の流通で手に入りにくいものは、直接生産農家から買うそうで、並々ならぬこだわりを感じます。
店内で日本茶が飲めるのはもちろん、入ってすぐのところに物販コーナーがあり、取り扱う主な茶葉が小分け販売され購入することができます。お茶の他に和菓子も用意されていますが、もちろん泉さんお手製で”老松”クオリティー。上菓子や琥珀、本わらび餅もあってどれもおいしそう〜!
お店は、繁忙期に奥様が手伝うことがあるそうですが、基本は泉さんが飲食・物販もろもろ一人で切り盛りしています。
販売されている茶葉は、気軽に試せる1杯分から、たっぷり飲みたいときにうれしい20g入りもあり、好みで購入することができますよ。
好みの”シングルオリジン茶”とお菓子をゆっくり味わって
店内ではお茶だけでも、お茶と生菓子のセットでもいただくことができます。中でも特徴的なのが、すべて”シングルオリジン”のお茶ということ。コーヒー業界でおなじみになった”シングルオリジン”ですが、単一農園単一品種という意味があるそうで、えん寿のお茶はシングルオリジンにこだわっています。
通常お茶は、年間を通し風味が均一になるよう「合組(ブレンド)」で仕上げられています。シングルオリジン(単一品種)だと、ブレンドより個性が際立ち、その茶葉本来の味を楽しむことができます。そのため同じ種でも時期により味や風味が変わることがありますが、それもそのお茶の個性として味わうことができるのです。
メニューをざっと見ます。季節ものもあり、さすが50種だけあって種類が多い……そしてかなり迷います。が! メニューは旨味があるもの、渋みがあるもの、さっぱりしたもの、といった具合にカテゴリ分けされているので、まずはそのときの気分でチョイスしてみましょう。シールで色分けされていて分かりやすいのがうれしい!
それでも決まらない、というときは泉さんに好みを伝えてみてください。会話の中から最適な種類を提案してもらえますので、アドバイスを参考に注文をどうぞ。
いざ実食!そのお味は…?
今回私が飲んだのは「特選 釜炒り茶」。釜炒り茶でも通常のもの、特級、特選があり、それぞれ個性や生産地も異なります。特選を選んだのは、釜炒り茶の中でもスモーキーさを感じられることと、宮崎でただ1軒しか作られていないというところに興味をひかれたから。
生菓子セットにすると、そのとき用意されている生菓子から選ぶことができます。6月下旬の訪問だったので、ここはやっぱり水無月をチョイス。一煎目ははいった状態で提供されました。
色は煎茶に番茶を少し混ぜたような感じでしょうか。味は、一煎目はさっぱりした後に甘みとスモーキーさがやってくるという感じで、はじめからガツンとしたスモーキーさはありません。でも飲みやすく、めちゃめちゃおいしい!ごくごく飲み干してしまいます。
手ほどきを受けながら二煎、三煎と
二煎目の淹れ方を教えてもらいます。プレートには急須と湯冷ましと時計が用意されていて、時間を図りながら淹れていきます。
このお茶の場合、湯冷ましに入れたお湯をすぐに急須に移していいそうです。時計を見て15秒カウントしたら飲みごろ。15秒はあっという間ですが、きちんと抽出されていますよ。
二煎目後の茶葉の様子です。まだ開ききっていないのがわかるでしょうか?手作業で丁寧に揉まれたお茶は細かなこより状になり、開くのに時間がかかります。2,3煎程度では開ききらないので何煎でも楽しめるのだそうです。5煎目までいただきましたが、まだまだ飲める感じでした。中には10煎近く飲む人もいるそうですよ。
そして煎を重ねるうちに、どんどんスモーキーさが増していく印象で、味の変化が分かりやすくおもしろかったです。
お茶は好きで普段から飲んでいますが、新たな発見ができた!という感じでした。
上品で自然な甘みの水無月
水無月は白いものと、黒糖を使ったものと2種類あったので、黒糖を選びました。丁寧に炊かれた小豆はほくほく!もっちりで黒糖の自然な甘みが口に広がり、何とも上品でおいしい水無月なんでしょう。お茶抜きにして、水無月だけわざわざ買いに来ても値打ちがあるほど絶品でした。さすが老松で長く修行されただけあります!
おいしい釜炒り茶に水無月、そして泉さんとの会話で楽しくおいしいひとときが過ごせました。
普段お茶をどのように管理しているか見せていただきました。種類ごとにこのように1杯分ずつ密閉して用意しているそうです。この作業だけでも時間がかかりそう……けれどこういう徹底した管理が、おいしいお茶を提供するベースになっているのですね。
若かりしころの疑問から始まった、お茶と和菓子の旅。「勉強をすればするほど奥が深い日本茶ですが、そこに難しさなどを感じることなく、普段行くカフェのように気軽に使ってほしい」。泉さんの願いがカタチとなり太秦で根を下ろし、いろんな人に広まろうとしています。
太秦は、年配の人が多いけど若い世代の住民も多く、いろんな層のお客さんが来るそうです。そんな地で、今日もおいしいお茶と和菓子が、たくさんの人のカラダとココロを満たしています。
店舗情報
電話:075-432-7564
営業時間:11:00〜18:00
定休日:水曜日・不定休
アクセス:嵐電・市バス 帷子ノ辻駅下車 徒歩約5分
ホームページ:http://chaka-enjyu.com/